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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 「金時此《こゝ》に於てか幽霊が大禁物。「綱も即ち幽霊《れこ》には恐れる。といはれて得右衛門大きに弱り、此まゝ帰らんは余り腑甲斐無し、何卒して引張り行かむ。はて好い工夫はおつとある。「何《どう》だ。一所に交際《つきあ》つて呉れたら、翌日《あす》とは言はず帰り次第藤沢(宿場女郎の居る処)を奢つて遣るが、と言へば四人《よつたり》顔見合はせ、「なるほどたかの知れた幽霊だ。「此中に人を殺したものは無いから、まづ命に別條はあるまい。「むゝ、背負《おぶ》つて呉れがちと怪しいが、「まゝよ行かうか、「おう。「うむ。と色で纏まる壮佼等《わかものども》、よしこの都々逸唱ひ連れ、城の裏手へ来たりしが、此処にて血の痕途断《とぎ》れたり。

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