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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 空に浮んだおからだが、下界から見る月の中から、この世へ下りる間には、雲が倒《さかさま》に百千万千、一億万丈の滝となって、唯どうどうと底知れぬ下界の霄《そら》へ落ちている。あの、その上を、唯一条、霞のような御裳《おすそ》でも、撓《たわわ》に揺れる一枝の桂をたよりになさる危《あぶな》さ。
 おともだちの上臈たちが、不図《ふと》一人見着《みつ》けると、俄に天楽の音を留《とど》めて、はらはらと立かかって、上へ桂を繰り上げる。引留められて、御姿が、またもとの、月の前へ、薄色のお召物で、笄がキラキラと、星にって見えましょう。

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