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 『湯島の境内』 青空文庫

早瀬 実は柏家《かしわや》の奥座敷で、胸に匕首《あいくち》を刺されるような、御意見を被《こうむ》った。小芳《こよし》さんも、蒼《あお》くなって涙を流して、とりなしてくんなすったが、たとい泣いても縋っても、こがれ死《じに》をしても構わん、おれの命令だ、とおっしゃってな、二の句は続かん、小芳さんも、俺も畳へ倒れたよ。
お蔦 (やや気色《けしき》ばむ)まあ、んでも構わないと、あの、ええ、ぬまいとお思いなすって、……小芳さんの生命《いのち》を懸けた、わけしりでいて、水臭い、芸者の真《まこと》を御存じない! 私にます、柳橋の蔦吉は男に焦《こが》れてんで見せるわ。

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