検索結果詳細


 『雛がたり』 青空文庫

 と細い段の緋毛氈。ここで桐の箱も可懐《なつか》しそうに抱しめるように持って出て、指蓋《さしぶた》を、すっと引くと、吉野紙の霞の中に、お雛様とお雛様が、梅白梅の面影に、ほんのりと出て、口許《くちもと》に莞爾《にっこ》とし給う。唯《と》見て、嬉しそうに膝に据えて、熟《じっ》と視ながら、黄金《こがね》の冠は紫紐、玉の簪の朱の紐を結い参らす時の、あの、若い母のその時の、面影が忘れられない。

 14/58 15/58 16/58


  [Index]