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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 というと、奇異なのは、宵に宰八が一杯――汲んで来て――縁の端近に置いた手桶が、ひょい、と倒斛斗《さかとんぼ》に引くりかえると、ざぶりと水を溢《こぼ》しながら、アノ手でつかつかと歩行《ある》き出した。
 その後を水が走って、早や東雲の雲白く、煙のような潦《にわたずみ》、庭の草を流るる中に、月が沈んで舟となり、舳を颯と乗上げて、白粉の花越しに、すらすらと漕いで通る。大魔の袖や帆となりけん、女《たおやめ》は船の几帳にかくれて、

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