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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 八蔵は泰助に恨あれば、其頭蓋骨は砕かれけむ髪の毛に黒血凝《かたま》りつきて、頬より胸に鮮血《なまち》迸り眼を塞ぎ歯を切《しば》り、二目とは見られぬ様にて、し居れるにもかゝはらず。尚先刻の腹癒《はらいせ》に、滅茶々々に撲り潰さむと、例の鉄棒を捻る時、銀平は耳を聳《そばだ》てて、「待て!誰か門を叩くぜ。八蔵は好くも聞かず、「日が暮れると人ッ子一人通らねえ此辺だ。今時誰が来るもんか。といふうち門の戸を丁《とん》、丁、丁、「お頼み申す。といふ声あり。

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