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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 八蔵は急いで鉄棒押隠し、「いかさま、叩くわ。「探偵の合棒でも来はしねえか。己《おら》あ見て来る、骸を早く、「合点だ。と銀平は泰助の骸を運び去りつ。八蔵は門の際《きは》に到り、「誰だね。「へい私。「へい私では解らないよ。夜夜中けたゝましい何の用だ。戸外《おもて》にて、「えゝ、滑川《なめりがは》の者ですが、お家へ婦人《をんな》が入つて来はしませんかい。八蔵は聞覚えある慥《たしか》に得右衛門の声なれば、はてなと思ひ、「何《どん》な女だ。「中肉中背、凄いほど美《い》い婦人《をんな》。と聞いて八蔵心可笑しく、「其様な者は来ない、何ぞまた此家《こゝ》へ来たといふ次第《わけ》でもあるのか。「私どもの部屋から溢《こぼ》れて続いてる血の痕が、お邸の裏手で止まつて居ります。

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