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 『天守物語』 泉鏡花を読む

 や、不重宝、途中揺溢《ゆりこぼ》いて、此は汁が出ました。(その首、血だらけ)これ、姥殿、姥殿。
舌長姥 あい/\、あい/\。
朱の盤 ご進物が汚れたわ。鱗の落ちた鱸《すゞき》の鰭《ひれ》を真水で洗ふ、手の悪い魚売人《ぎよばいにん》には似たれども、其の儀では決してない。姥殿、此方《こなた》、一拭ひ、清めた上で進ぜまいかの。

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