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 『高野聖』 泉鏡花を読む

「凡そ人間が滅びるのは、地球の薄皮が破れて空から火が降るのでもなければ、大海が押被さるのでもない、飛騨国の樹林が蛭になるのが最初で、しまひには皆血と泥の中に筋の黒い虫が泳ぐ、其が代がはりの世界であらうと、ぼんやり。
 なるほど此の森も入口では何の事もなかつたのに、中へ来ると此通り、もつと奥深く進んだら早や不残立樹の根の方から朽ちて山蛭になつて居よう、助かるまい、此処で取殺される因縁らしい、取留めのない考へが浮んだのも人が知期に近いたからだと弗と気が付いた。

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