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『婦系図』 青空文庫
土曜日は正午《ひる》までで授業が済む――教室を出る娘たちで、照陽女学校は一斉に温室の花を緑の空に開いたよう、溌《ぱっ》と麗《うららか》な日を浴びた色香は、百合よりも芳しく、杜若《かきつばた》よりも紫である。
年上の五年級が、最後に静々と出払って、もうこれで忘れた花の一枝もない。四五人がちらほらと、式台へ出かかる中に、妙子が居た。
阿嬢《おじょう》は、就中活溌に、大形の紅入友染の袂《たもと》の端を、藤色の八ツ口から飜然《ひらり》と掉《ふ》って、何を急いだか飛下りるように、靴の尖《さき》を揃えて、トンと土間へ出た処へ、小使が一人ばたばたと草履穿《ばき》で急いで来て、
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