検索結果詳細


 『高野聖』 泉鏡花を読む

 何の道死ぬるものなら一足でも前へ進んで、世間の者が夢にも知らぬ血と泥の大沼の片端でも見て置かうと、然う覚悟が極つては気味の悪いも何もあつたものぢやない、体中珠数生になつたのを手当次第に掻い除け〓《むし》り棄て、抜き取りなどして、手を挙げ足を踏んで、宛で躍り狂ふ形で歩行き出した。
 はじめの中は一廻も太つたやうに思はれて痒さが耐らなかつたが、しまひにはげつそり痩せたと感じられてづき/\痛んでならぬ、其上を容赦なく歩行く内にも入交りの襲ひをつた。

 157/622 158/622 159/622


  [Index]