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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 嘉吉が、そこで、はい、櫓を握って、ぎっちらこ。幽霊船の歩《ぶ》に取られたような顔つきで、漕出したげでござりますが、酒の匂に我慢が出来ず……
 御繁昌の旦那から、一杯おみきを遣わされ、と咽喉《のど》をごくごくさして、口を開けるで、さあ、飲まっせえ、と注ぎにかかる、と幾干《いくら》か差引くか、と念を推したげで、のう、此処らは確でござりました。

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