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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 御繁昌の旦那から、一杯おみきを遣わされ、と咽喉《のど》をごくごくさして、口を開けるで、さあ、飲まっせえ、と注ぎにかかる、と幾干《いくら》か差引くか、と念を推したげで、のう、此処らは確でござりました。
 幡随院長兵衛じゃ、酒を振舞うて銭を取るか。しみったれたことをいうな、と勝った奴がいきります。
 お手渡《てわたし》で下される儀は、皆の衆も御面倒、これへ、というて、あか柄杓を突出いて、だふだふと受けました。あの大面が、お前様、片手で櫓を、はい、押しながら、その馬柄杓《ばびしゃく》のようなもので、片手で、ぐいぐいと煽ったげな。

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