検索結果詳細


 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 今は悪魔ばかりの舞台となりぬ。磨《と》ぎ清《すま》したる三日月は、惜しや雲間に隠れ行き、縁《ゆかり》の藤の紫は、厄難未だ解けずして再び奈落に陥りつ、外より来れる得右衛門も鬼の手に捕られたり。さて彼の下枝は如何ならむ。
 さるほどに得三は高田とともに家内《うち》に入り、下枝は居らずや見えざるかと、あらゆる部屋を漁り来て、北の台の座敷牢を念の為め開き見れば、射込む洋燈《ランプ》の光の下に白く蠢くもののあるにぞ、近寄り見れば果せるかな、下枝は此処にぞ発見《みだ》されたる。

 158/219 159/219 160/219


  [Index]