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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
酒は一樽打抜《ぶちぬ》いたで、些《ちっ》とも惜気はござりませぬ。海からでも湧出すように、大気《たいき》になって、もう一つやらっせえ、丁だ、それ、心祝いに飲ますべい、代は要らぬ。
帰命頂礼《きみょうちょうらい》、賽ころ明神の兀天窓《はげあたま》、光る光る、と追従いうて、あか柄杓へまた一杯、煽るほどに飲むほどに、櫓拍子《ろびょうし》が乱になって、船はぐらぐら大揺れ小揺れじゃ。こりゃならぬ、賽が据らぬ。
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