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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
帰命頂礼《きみょうちょうらい》、賽ころ明神の兀天窓《はげあたま》、光る光る、と追従いうて、あか柄杓へまた一杯、煽るほどに飲むほどに、櫓拍子《ろびょうし》が乱になって、船はぐらぐら大揺れ小揺れじゃ。こりゃならぬ、賽が据らぬ。
ええ、気に入らずば代って漕げさ、と滅多押しに、それでも、大崩壊《おおくずれ》の鼻を廻って、出島の中へ漕ぎ入れたでござります。
さあ、内海の青畳、座敷へ入ったも同じじゃ、と心が緩むと、嘉吉奴《め》が、酒代を渡してくれ、勝負が済むまで内金を受取ろう、と櫓を離した手に銭《おあし》を握ると、懐へでも入れることか、片手に、あか柄杓を持ったなりで、チョボ一の中へ飛込みましたが。
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