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 『婦系図』 青空文庫

「別に、一大事に関して早瀬は父様の許《とこ》へ、頃日《このごろ》に参った事はないですかね。或《あるい》は何か貴娘、聞いた事はありませんか。」
 小さな声だったが判然《はっきり》と、
「いいえ。」と云って、袖に抱いた風呂敷包みの紫を、皓歯《しらは》で噛んだ。この時、この色は、瞼のその朱《あけ》を奪うて、寂しく白く見えたのである。

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