検索結果詳細


 『日本橋』 青空文庫

 いつまでも、お帰んなさいませんし、それだし、あの、一度お寝ったんですから、姉さんは寝衣でしょうのに、どうなすったしら。……私、心配で……ここまで起きて来て、あの、通へ出て見ようと思ったんですけれど、可恐いでしょう。……それですから、あの、ここにつかまって震えていましたの。」
「何だねえ、そんな弱虫が、それじゃ、来てくれたって何にもなりゃしないじゃないか。」
 と口では笑いながら、嬉しい目で。その癖もの案じの眉が顰む。……軒の柳に靄の有る、瓦斯ほの暗き五月闇。浅黄の襟に頬白う、………また雨催の五位鷺が啼くのに、内へも入らず、お孝は彳む。

 1681/2195 1682/2195 1683/2195


  [Index]