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 『絵本の春』 青空文庫

 ちょうど吹倒れた雨戸を一枚、拾って立掛けたような破れた木戸が、裂《きれ》めだらけに閉《とざ》してある。そこを覗いているのだが、枝ごし葉ごしの月が、ぼうとなどった紙《しらかみ》で、木戸の肩に、「貸本」と、かなで染めた、それがほのかに読まれる――紙が樹の隈《くま》を分けた月の影なら、字もただ花と莟《つぼみ》を持った、桃の一枝《ひとえだ》であろうも知れないのである。

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