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『縁結び』 青空文庫
帰途《かえり》は、その清水の処あたりで、もう日が暮《く》れた。婆《ばばあ》がやかましいから急ごう、と云うと、髪をばらりと振《ふ》って、私の手をむずと取って駆出《かけだ》したんだが、引立《ひった》てた腕《うで》が〓《も》げるように痛む、足も宙《ちゅう》で息が詰《つま》った。養子は、と見ると、目が血走っていようじゃないか。
泣出したもんだから、横抱《よこだき》にして飛んで帰ったがね。私は何だか顔はあかし、天狗《てんぐ》にさらわれて行ったような気がした。袂に入れた桃の実は途中で振落《ふりおと》して一つもない。
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