検索結果詳細


 『日本橋』 青空文庫

「不可んぞ、これは心細い。」と、苦笑いをしながら立直って、素直に杖を支くと、そのまま渡り掛けたのは一石橋。月はないが、秋あかるく、銀河の青い夜の事。それは葛木晋三である。
 露地に吾妻下駄カタカタの婀娜な女と因縁のある、唄の意味も心細いが、お孝が投遣りに唄うのは、勝気と胆勇を示すものと云って可い。その口癖がつい乗った男の方は、虚気と惑溺を顕すものと、心付いた苦笑も、大道さなか橋の上。思出し笑と大差は無いので、これは国手我身ながら(心細い。)に相違ない。

 1743/2195 1744/2195 1745/2195


  [Index]