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 『日本橋』 青空文庫

 今、橋の上を欄干に添って、日本銀行の方へ半ば渡り掛けると、橋詰の、あの一石餅の、早や門を鎖した軒下に、大な立ん坊の迷児のごとく蹲っていた男がむらむらと立つと、ざわざわと毛の音を立てて、鼻息を前にハッハッ獣の呼吸づかい。葛木の背後に迫って、のそっと前へ廻ると、両手を掉った不器用な、意気地の無い叩頭をして、がくりと腰を折って、

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