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 『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

 我がために、見とゞけ役の此の人数で、風呂を検べたのだと思ふから声を掛けると、一度に揃つてお時儀をして、屋根が萱ぶきの長土間に敷いた、そのあゆみ板を渡つて行く。土間のなかばで、其のおぢやのかたまりのやうな四人の形が暗く成つたのはトタンに、一つ二つ電燈がスツと息を引くやうに赤く成つて、橋がかりのも洗面所のも一斉にパツと消えたのである。
 と胸を吐くと、さら/\さら/\と三筋に……恁う順に流れて、洗面所を打つの下に、先刻の提灯が朦朧と、半ば暗く、巴を一つ照らして、墨でかいた炎か、鯰の跳ねたかと思ふ形に点れて居た。

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