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 『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

「それでは、お富士様、お諏訪様がた、お目かけられものかも知れない――お待ち……あれ、気の疾《はや》い。」
 紫の袖が解けると、扇子《おうぎ》が、柳の膝に、丁《ちょう》と当った。
 びくりとして、三つ、ひらめく舌を縮めた。風のごとく駆下りた、ほとんど魚の死骸《しがい》の鰭《ひれ》のあたりから、ずるずると石段を這返《はいかえ》して、揃って、姫を空に仰いだ、一所《ひとところ》の鎌首は、如意《にょい》に似て、ずるずると尾が長い。

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