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 『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

 いまにも電燈が点くだらう。湯殿口へ、これを持つて入る気で、境がこゞみ状に手を掛けようとすると、提灯がフツと消えて見えなくなつた。
 消えたのではない。矢張り是が以前の如く、湯殿の戸口に点いて居た。此はおのづから雫して、下の板敷きの濡れたのに目の加減で、向うから影がしたものであらう。はじめから、提灯が此処にあつた次第ではない。境は、斜に影の宿つた水中の月を手に取らうとしたと同一である。

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