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『蛇くひ』 青空文庫
されば郷《がう》屋敷田畝は市民のために天工の公園なれども、隠然(応)が支配する所となりて、猶《なほ》餅に黴菌《かび》あるごとく、薔薇《しやうび》に刺《とげ》あるごとく、渠等《かれら》が居を恣《ほしいまゝ》にする間は、一人も此惜むべき共楽の園に赴く者なし。其《その》去つて暫時来らざる間を窺うて、老若争うて散策野遊を試む。
さりながら応が影をも止《とゞ》めざる時だに、厭ふべき蛇喰《へびくひ》を思ひ出《いだ》さしめて、折角の愉快も打消され、掃愁の酒も醒むるは、各自が伴ひ行く幼き者の唱歌なり。
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