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 『日本橋』 青空文庫

「今言わしゃったは度胸でないで。胆玉でないですだ。学問の力だ。国手の見識ですわい。
 詫入りますで、はい。
 もとより将軍様に直訴する云うたほどですで、はじめから国手の身体に向うて手を挙ぎょうとは思わんのですれど、ものは発奮だで、赫としたでな。そりゃ刃物|措け、棒切一本持たいでも、北海道|釧路の荒土を捏ねた腕だで、この拳一つでな、頭ア胴へ滅込まそうと、……ひょいと抱上げて、ドブンと川に溺める事の造作ないも知ったれども、そりゃ、あれを見ぬ前だ。

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