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 『日本橋』 青空文庫

 国手、顔を見られないくらいなら、姿だけも見るが可えし、姿さえ見られんなら声ばかりも聞くが増だし、その声さえも聞かれないなら、跫音でも聞いていたい。その跫音にすらすらと衣服の触る音でもしょうなら、魂に綱をつけて、ずるずる引摺り引廻されて、胸を引掻いて、のた打廻るだ。
 お前ん、誰も知るまいし、また知らせるようにもせんですだが、俺はお前ん、二階から突出されて、お孝の内に出入りが出来なくなってからは、天に階子掛けるように逆せ上って、極道、滅茶苦茶、物狂いで、潰れかけた商会は煙にする、それがために媽々はぬ。」

 1813/2195 1814/2195 1815/2195


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