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 『日本橋』 青空文庫

 耳にも入れいで、(汚らわしい、こんな物を。)お前ん、お孝が蒲団を取って向うへ刎ねると、その時ですわい。かねて国手の事を俺|嗅ぎつけて知っとったで、お孝を威しつけてくりょうとな、前の夜さり、懐中に秘いておったですれども、顔を見ると、だらけて、はや、腑が抜けて、そのまんま、蒲団の下へ突込んで置いた、鞘の短刀が転がって出たですが。

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