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 『日本橋』 青空文庫

 お孝は遁げたでないですが。……あの階子は取外しが出来るだでね、お孝が自分でドンと突いて、向うの壁へ階子をば突ぱずしたもんですだ。(短刀をお抜き、さあ、お殺し、殺しように註文がある。切っちゃ不可い、十の字を二つ両方へ艸冠とやらに曰をかいて。)とお前ん、……葛木と云う字に、突いて殺せ。(名まで辛抱は出来まいが、一字や二字は堪えて見せよう。さあ早く。)と洞爺湖の雪よか真な肌を脱いで、背筋のつるつると朝日で溶けて、露の滴りそうな生々としたやつを、水浅黄ちらめかいて、柔りと背向きに突着けたですだで。

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