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 『歌行燈』 従吾所好

「捻平さん、お互に年は取りたくないてね。些と三絃〈ぺん/\〉でも、とあるべき処を、お膳の前に按摩が出ますよ。……見くびつたものではないか。」
「兎角、其の年効ひもなく、旅篭屋の式台口から、何んと、事も慇懃に出迎へた、家の隠居らしい切髪の婆様をじろりと見て、
(ヤヤ、難有い、仏壇の中に美婦〈たぼ〉が見えるわ、簀の子の天井から落ち度い。)などと、膝栗毛の書抜きを遣らつしやるで魔が魅〈さ〉すのぢや。屋台は古いわ、造りも広大。」

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