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『歌行燈』
従吾所好
「兎角、其の年効ひもなく、旅篭屋の式台口から、何んと、事も慇懃に出迎へた、家の隠居らしい切髪の婆様をじろりと見て、
(ヤヤ、難有い、仏壇の中に
美
婦〈たぼ〉が見えるわ、簀の子の天井から落ち度い。)などと、膝栗毛の書抜きを遣らつしやるで魔が魅〈さ〉すのぢや。屋台は古いわ、造りも広大。」
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