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 『日本橋』 青空文庫

「これが有るで、俺、この頃では、一日二日怠けて飯食わねえ事あるですけれども、身体が弱らん。かえって、ほかほか温だね。取っちゃ食い、取っちゃ食いするだ。が、あとからあとから湧くですわい。二十間の毛皮を縫包みにしておるで、形のある中は虫が湧くですだ。」
 葛木は面を背けて、はっと吐こうとした唾を、清葉の口と、雛の思出、控えて手巾を口に当てた。
 ――やがて、お孝が狂気になったも、一つはこの虫が因である――

 1887/2195 1888/2195 1889/2195


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