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 『婦系図』 青空文庫

 それをまたひとりでここで見直しつつ、半ば過ぎると、目を外らして、多時《しばらく》思入った風であったが、ばさばさと引裂《ひっさ》いて、くるりと丸めてハタと向う見ずに投《ほう》り出すと、もう一ツの柱の許に、その蝙蝠傘《こうもり》に掛けてある、主税の中折帽《なかおれ》へ留まったので、
「憎らしい。」と顔をめて、刎《は》ね飛ばして、帽子《ハット》を取って、袖で、ばたばたと埃《ほこり》を払った。
 書生が、すっ飛んで、格子を出て、どこへ急ぐのか、お妙の前を通りかけて、

 1889/3954 1890/3954 1891/3954


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