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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 此壇階子の中央《なかほど》より道は両つに岐れたり。右に行けば北の台なる彼《かの》座敷牢に出づべきを、下枝は左の方に行きぬ。見も知らざる廊下細くして最《いと》長し。肩をすぼめて漸々《やう/\》歩み行くに、両側は又壁なり。理外の理さへありと聞く之《こ》は家の外《ほか》の家ならむか。十数年来住める身の、得三も之《こ》は知らざるなり。廊下の終る処に開戸あり、開けて入れば自から音なく閉ぢて彼方より顧みれば壁と見紛ふ許りなり。此処ぞ彼《かの》人形の室《ま》の裏なる密室になんありける。

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