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『国貞えがく』 青空文庫
それも科学の権威である。物理書というのを力に、幼い眼を眩《くら》まして、その美しい姉様たちを、ぼったて、ぼったて、叩き出した、黒表紙のその状《さま》を、後に思えば鬼であろう。
台所の灯《ともしび》は、遙に奥山家《おくやまが》の孤家《ひとつや》の如くに点れている。
トその壁の上を窓から覗いて、風にも雨にも、ばさばさと髪を揺って、団扇の骨ばかりな顔を出す……隣の空地の棕櫚の樹が、その夜は妙に寂《しん》として気勢《けはい》も聞えぬ。
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