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 『国貞えがく』 青空文庫

 トその壁の上を窓から覗いて、風にも雨にも、ばさばさと髪を揺って、団扇の骨ばかりな顔を出す……隣の空地の棕櫚の樹が、その夜は妙に寂《しん》として気勢《けはい》も聞えぬ。
 鼠も寂莫《ひっそり》と音を潜《ひそ》めた。……


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