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 『婦系図』 青空文庫

 これを聞いて、屈《かが》んで、板へ敷く半纏の裙《すそ》を掻取《かいと》り、膝に挟んだ下交《したがい》の褄を内端《うちわ》に、障子腰から肩を乗出すようにして、つい目の前《さき》の、下水の溜りに目を着けた。
 もとより、溝板《どぶいた》の蓋があるから、ものの形は見えぬけれども、優《やさし》い連弾《つれびき》はまさしくその中。
 笑《えみ》を含んで、クウクウと吹き鳴らすと、コロコロと拍子を揃えて、近づいただけ音を高く、調子が冴えてカタカタカタ!

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