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『春昼後刻』
泉鏡花を読む
庵室の客人なんざ、今聞いたやうだと、夢てふものを頼み切りにしたのかな。」
と考へが道草の蝶に誘はれて、ふは/\と玉の緒が菜の花ぞひに伸びた処を、風もないのに、颯とばかり、横合から雪の腕、緋の襟で、つと爪先を反らして足を踏伸ばした姿が、真黒な馬に乗つて、蒼空を翻然と飛び、帽子の廂を掠めるばかり、大波を乗つて、一跨ぎに
紅
の虹を躍り越えたものがある。
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