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 『婦系図』 青空文庫

 颯と開いた襖とともに、唐縮緬《めりんす》友染の不断帯、格子の銘仙《めいせん》の羽織を着て、いつか、縁日で見たような、三ツ四ツ年紀《とし》の長《た》けた姿。円い透硝子《すきがらす》の笠のかかった、背の高い竹台の洋燈《ランプ》を、杖に支く形に持って、母様《かあさん》の居室《いま》から、衝《つ》と立ちざまの容子《ようす》であった。
 お妙のを一目見ると、主税は物をも言わないで、そのままそこへ、膝を折って、畳に突伏《つっぷ》すがごとく会釈をすると、お妙も、黙って差置いた洋燈の台擦《だいず》れに、肩を細うして指の尖《さき》を揃えて坐る、袂《たもと》が畳にさらりと敷く音。

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