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『婦系図』 青空文庫
お妙の顔を一目見ると、主税は物をも言わないで、そのままそこへ、膝を折って、畳に突伏《つっぷ》すがごとく会釈をすると、お妙も、黙って差置いた洋燈の台擦《だいず》れに、肩を細うして指の尖《さき》を揃えて坐る、袂《たもと》が畳にさらりと敷く音。
こんな慇懃《いんぎん》な挨拶をしたのは、二人とも二人には最初《はじめて》で。玄関の障子にほとんど裾の附着《くッつ》く処で、向い合って、こうして、さて別れるのである。
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