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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 途端に烈しく戸を打叩きて、「赤得、赤得。と叫び立つれば、「汝《うぬ》野狐奴《のぎつねめ》、又来《う》せた。と得三室外に躍出づれば、ぱつと遁出す人影あり。廊下の暗闇《やみ》に姿を隠して又――得三をぞ呼んだりける。
 憎さも憎しと得三が、地踏〓《ぢだんだ》ふんで縦横に刃を打掉る滅多打。声は漸々遙になり、北の台にて哀《かなし》げに、「あかアぎさん、とくざうさん。――四辺《あたり》は寂然《しん》。

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