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『高野聖』
泉鏡花を読む
婦人は暫く考へて居たが、弗と傍を向いて布の袋を取つて、膝のあたりに置いた桶の中へざら/\と一幅、水を溢すやうにあけて縁をおさへて、手で掬つて俯向いて見たが、
(あゝ、お泊め申しませう、丁度炊いてあげますほどお米も
ござ
いますから、其に夏のことで、山家は冷えましても夜のものに御不自由も
ござ
んすまい。さあ、左も右もあなた、お上り遊ばして。)
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