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『高野聖』
泉鏡花を読む
(あゝ、お泊め申しませう、丁度炊いてあげますほどお米もございますから、其に夏のことで、山家は冷えましても夜のものに御不自由もござんすまい。さあ、左も右もあなた、お上り遊ばして。)
といふと言葉の切れぬ先にどつかと腰を落した。婦人は衝と身を起して立つて来て、
(御坊様、それでござんすが一寸御断り申して置かねばなりません。)
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