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 『日本橋』 青空文庫

 その下に、前と後を、おなじ消防夫に遮られつつ、口紅の色も白きまで顔色をかえながら、かかげた片褄、跣足のまま、宙へ乗って、前へ出ようと身をあせるのは清葉であった。
「放して、放して。」
 この土蔵一つ、細い横町の表から引込んだ処に、不思議なばかり、白磨の千本格子がぴたりと閉って、寐静ったように音もしないで、ただ軒に掛けた滝の家の磨硝子の燈ばかり、瓦斯の音が轟々と、物凄い音を立てた。

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