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 『日本橋』 青空文庫

 清葉は、向うから突戻されてよろよろと、退ると、喞筒の護謨管に裳を取られてばったり膝を、その消えそうな雪の頸へ、火の粉がばらばらとかかるので、一人が水びたしの半纏を脱いで掛けた。
 この折から、ここの横町を河岸へ出る、角の電信柱の根を攀じて、そこに積んだ材木の上へ、すっくと立って顕れた、旅僧の檜木笠は、両側の屋根より高く、小山のごとき松明の炎に照されたが、群集の肩を踏まないでは、管の通った他に、一足も踏込む隙間は無かったのである。

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