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『日本橋』
青空文庫
発奮で打ったか。前刻滝の家の二階で受けた怪我の、気の勢で留まっていたか。この時、額から垂々と血が流れたが、それには構わないで、ほとんど本能的に、胸へ抱いた年弱の三歳の子を両手で抱えた。
が、慌しく刀を拾うと、何を思う隙も無さそうに、ギラリと冷かに抜いて、鞘を棄てて提げたのである。
そのまま襲入った、向うの露地口には、八九人|人立したが、真中をずッと通るのに、誰も咎めたものが無い。
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