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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 幾度か水火の中に出入して、場数巧者《かうしや》の探偵吏、三日月と名に負ふ倉瀬泰助なれば、何とて脆くも得三の短銃《ピストル》に僵《たふ》るべき。されば高楼《たかどの》より狙ひ撃たれ、外よりは悪僕二人が打揃ひて入り来しは、さすがの泰助も今迄に余り経験無き危急の場合、一度は狼狽したりしが、予て携ふる絵具にて、手早く血汐を装ひて、第三発の放たれしを、避けつゝ故意《わざ》と撃たれし体にて叢》に僵《たふ》れしに、果せる哉悪人輩《ばら》は誑《そらじに》に欺かれぬ。

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