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 『春昼』 泉鏡花を読む

 と、口では澄まして然う言つたが、胸はそゞろに時めいた。
「成程、今貴下がお話しになりました、其の、御像のことに就いて、恋人云々のお言葉を考へて見ますると、是は、みだらな心ではなうて、行き方こそ違ひまするが、かすかに照らせ山の端の月、と申したやうに、観世音にあこがるゝ心を、古歌に擬らへたものであつたかも分りませぬ。――夢てふものは頼み初めてき――夢になりともお姿をと言ふ。

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