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 『春昼』 泉鏡花を読む

「成程、今貴下がお話しになりました、其の、御像のことに就いて、恋人云々のお言葉を考へて見ますると、是は、みだらな心ではなうて、行き方こそ違ひまするが、かすかに照らせ山の端の月、と申したやうに、観世音にあこがるゝ心を、古歌に擬らへたものであつたかも分りませぬ。――夢てふものは頼み初めてき――夢になりともお姿をと言ふ。
 真個に、あゝいふ世に希な人ほど、早く結縁いたして仏果を得た験も沢山ございますから。
 それを大掴に、恋歌を書き散らして参つた、怪しからぬ事と、さ、それも人によりけり、お経にも、若有女人設欲求男、と有りまするから、一概に咎め立てはいたさんけれども。彼がために一人殺したでござります。」

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